独自の進化を遂げたタイのバイクはおいらの心を魅了した。
タイではバイクが一般的な庶民の移動手段になっています。
自動車の価格が一般的なタイ人の年収に比べると高く、道路も渋滞が激しい為、価格と維持費が安く、渋滞もすり抜け可能なバイクは所有しやすく使いやすい乗り物なのです。
バイクによるタクシーも多く、歩くのが嫌いなタイ人は大通りに出るまでの500mでもバイクタクシーを利用します。バイクタクシーは短距離向けで大通りからソイと呼ばれる小道をエリアにしておりタイ人価格で1乗車10バーツ(日本円で約30円)で利用できます。
さて、東南アジアのバイクと聞いて一番最初に思い浮かぶのは日本でもお馴染みの「カブ」だと思います。
確かにベトナムでは今も多くのカブが走っているのですが、タイや台湾等ではカブを進化させた「カブなんだけどカブじゃないバイク」が登場し、最近では日本にも輸入されているのでご存じの方も多いでしょう。
おいらが初めてタイを訪れた時に、一番最初に思ったのが「タイのカブってかっこいい!」でした。
その頃のタイカブは最近のタイカブのようにスクータータイプは少なく、写真の様なアンダーボーンと呼ばれるカブそっくりなフレームに少しだけカウルが付いたマニュアルミッションタイプがほとんどでしたが、若者向けのスポーツタイプバイクも走っていました。
こんなバイクが2ストロークの渇いた甲高い排気音を奏でながらタイの街を颯爽と走り抜けていきます。元々NS-1やRGV250Γ、当時はRG125Γに乗っていたおいらはこのタイバイクに魅了されてしまいます。
普通の感覚の人がこのタイバイクを見たらきっと「仮面ライダーのバイクみたい」と思うでしょう。
まさにその通り、まるでバッタのような横から見た姿、正面から見ても仮面ライダーの顔が付いていても不思議じゃない小さなフロントカウル、細いボディに細いタイヤ。タイでは仮面ライダーが大人気だったのでタイのバイクにもそのテイストが受け継がれているのかも知れません。
おいらはタイの本屋でバイク雑誌を何冊か購入しました。
そこにははじめから独創的なタイバイクを更にカスタムし、メッキやアルマイト処理されたキラキラのカスタムパーツを取り付けた更に独創的なバイクの写真が並んでいます。
その姿はまるでタイのお寺のような煌びやかさ。タイは仏教の国でお寺も黄金に輝いています。そういう仏教美術のデザインがバイクにも取り入れられているのでしょうか。よくわかりませんが、素敵だと思ったのです。
日本に帰国したおいらは早速このタイバイクを輸入できないか調べましたが、個人のレベルではかなり難しく、輸送費や関税を考えると相当の出費を覚悟しなければなりません。タイバイクを輸入して販売している業者もありましたが、値段も高く、お店も関東方面だった為、メンテナンスや保証を考えると無理して購入するのは賢い選択ではありませんでした。それでもいつかタイバイクで日本を走りたいという思いは強く、少しずつではあったがタイバイク貯金を始めたのです。
初めてタイバイクに衝撃を受けてから数年後、思わぬ発見をします。
おいらにとって初めてのバイク、HONDAのNS-1を購入した岐阜のバイクショップが本格的にタイバイクの取り扱いを始めたのです。元々タイバイクの輸入を行っていたエンデュランスと提携したのですが朗報です。メンテナンスも保証も近くのお店で可能であれば購入を渋る理由はありません。
残念なことにタイでも2ストロークエンジンを搭載したバイクは環境問題で販売が終了してしまい、4ストロークエンジンを搭載したバイクしか輸入されていませんでしたが、姿は間違いなくタイバイクそのもの、おいらが憧れたあのバイクでした。お値段は日本円で30万円、タイだと16万円くらいで買えるバイクですが、個人で輸入した時の送料などを考えると決して高い買い物でもありません。
早速お店に行き、お店を出る時には契約書の写しを手にしていたおいらだったのです。